抄録
ニホンザルのメスは、生まれた群れで生涯を終えることが知られている。自然状態においては群れから消息を絶った個体のその後を知る機会は乏しい。筆者は、保護管理の業務の一環で宮城県と福島県の県境近辺に生息する群れのオトナメスを麻酔銃で捕獲したが、そのメスには古い電波発信器が装着されていた。この発信器の番号を関係者に照会すると、18年前に福島市にコンソートペアで出没し、発信器を装着後に放獣された6才のメスであることが判明した。このメスは、群れが生息しない地域に出没して、出自群が不明であったことから市内北部の群れの生息地域へ放された。その後、しばらく電波による追跡ができていたが消息を絶ったとある(伊沢,2009)。それが今回、放された地域から直線で17km程度の地域で群れの一員として発見された。この距離から出自群とは考えにくいため、発見したメスがどのように群れの一員になれたかを考察する。