抄録
近年、宮城県大崎市の市役所周辺の地域において、カラスによる鳥害が住民の間で問題になっている。人間の生活圏において様々な問題を引き起こすカラスは全国的にも社会問題となっており、対策が続けられてきた。現在も各自治体で対策に取り組まれているが、都市の近代化等による生息地の多様化に伴い、地域ごとの生態の違いが顕著になったと言える。そのため、各地域におけるカラスの生態や被害の実態を十分に加味した対策を講じることが必要であると考えられる。一方、有害鳥獣に指定されているカラスを、駆除や追い払いの対象という視点にとどまらず野生動物として扱う視点から評価することも生態系の保全のために重視したい。本研究では、大崎市におけるカラスの生態を分析し、カラスとの共存が可能な被害対策を行うことを目的とした。
市役所への調査から、特に住宅地での糞害が深刻であることが分かった。カラスは単独ではねぐらに入らず、夕方頃に電線や鉄塔などに集まってから集団でねぐらに入る“就塒前集合”をする習性があり、住宅地の電線での就塒前集合が糞害の原因であると考えられる。
糞害対策として、過去に住民から苦情を受けた電力会社が電線への鳥除けカバーの設置を行っているが、住民によるとカラスの集合は一時的に解消されたものの、効果が徐々に薄れ、現在は以前のような状況に戻っているという。このような単純な追い払いでは長期の効果が見込めない上に、追い払われたカラスが別の場所で問題となる可能性がある。根本的解決を図るためには生態の把握が必要であり、第一段階としてねぐらの特定を行う予定である。また、被害の種類を調査し、結果を地図上にプロットすることで、可視化された被害状況からカラスの行動を評価する方法を検討中である。
本研究では地域の課題解決にとどまらず、対策を組む上で基礎となる生態調査のガイドラインの作成などにより、他地域の課題解決にも貢献したい。