抄録
ヒトを含む霊長類の視覚機能には、赤・緑・青の各色に感受性をもつ3色色覚が備わっている。私たちはこれまでに、赤・緑・青・黄の各色における同色間の明度の差を見分ける能力として、もっとも識別可能な色の順は黄→緑→赤であり、緑と赤はほぼ同程度であることを明らかにした(日本人類学会,2023)。今回は各色の明度変化の識別限界値の周辺で、明度を変化させる率をさらに細かく設定し、識別できる色ごとの明度の違いついて精査した。
調査は16~17歳の女子30人を対象に行った。色の種類は、色相環のなかから「赤・黄・橙・青・マゼンタ・緑」の6色を用いた。暗室に置いた液晶モニタの画面に1色ずつ同色に塗った円を8個並べて表示させ、そのうち7個は同じ明度の円(標準円)とし、明度が違う1個(異明度円)をランダムな位置に混入させてサンプル画面とした。この異明度円の明度比率を標準円に対して99%から70%まで1%おきに変えて調整し、明度変化に段階をつけた29パターンのサンプル画面を各色で作成した。なお、明度調整には株式会社アイビス社製アプリ“ibisPaintX”を使用した。
被験者に各色とも29パターンのサンプル画面を次々に見せていき、各画面の異明度円を選択させ、その正解率から各被験者が識別できる明度差の限界値を各色で調べた。
その結果、黄では、対標準比で92%の異明度円を全被験者が見分けられた。緑では90%、赤と橙とマゼンダは80%、青は70%までの異明度円を全被験者が見分けられた。このことから、色によってヒトが識別可能な明度変化の程度は異なることが確認され、識別可能な限界値が高い色は、黄→緑→赤・橙・マゼンダ(3色は同結果)→青の順であることがわかった。また、それらの識別の限界値には個体差があることが見出された。