霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
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口頭発表
音声による野生ヤクシマザルの個体識別方法の検討
金原 蓮太朗角田 史也香田 啓貴松田 一希半谷 吾郎
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 30

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抄録
音声は森林のような視覚的に乏しい環境に生息する霊長類において、有効なコミュニケーション方法である。音声コミュニケーションから社会関係を分析するためには、音声からの個体識別が重要である。なぜなら、誰と誰がコミュニケーションしたかや、誰の音声に対して反応したかなどの社会行動の分析が必要だからである。しかし、音声から個体識別をするという課題は、半世紀以上前から取り組まれているが、困難がともなっていた。従来の音響分析手法は、ピッチやフォルマントといった形態的に変異が予想できる音響特徴に着目して音響分析をしたのち、主成分分析などの古典的な次元削減方法と多変量解析を組み合わせることで識別性能を評価してきた。しかし、使用している音響特徴の選択の恣意性(分析者が恣意的に特徴選択を繰り返す問題)や、次元削減方法の妥当性には疑問が残り、汎用性も低いままであった。そこで本研究では、屋久島のニホンザルのオトナメスのクーコールから個体識別を行うことを目的とした。特に、ピッチの計測や共鳴周波数の計測など特定の音響特徴計測をせず、より汎用的な形で分類評価までできる方法について予備的に分析した。具体的には、先行研究(Thomas et al. 2022)の方法を参考に、音声波形から最初に得られるスペクトラム情報を音響特徴として抽出し、ピッチ計測などの一般的によく用いられる音響特徴は計測しなかった。その後、近年開発された次元削減方法であるUMAPを用いて3次元空間に音響特徴を埋め込み、個体ごとに分類できるかどうかを確認した。その結果、比較的高精度度に各個体の音声を識別できることが示された。これは、今回の手法が音響的特徴を探索する労力を軽減しつつ個体識別を行う上で有効であることを示唆している。事前に多くの音声を得ることができれば、少ない労力で群れの中の個体の発声者特定が、以前より容易になることが期待できた。
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© 2024 日本霊長類学会

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