霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
会議情報

口頭発表
ロリス類とガラゴ類の進化に関する脳函エンドキャストの形態学的研究
豊田 直人中務 真人國松 豊西村 剛
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 31

詳細
抄録
ロリス類とガラゴ類は系統的に近縁なグループであるものの、ロコモーションを中心とした生態的な特徴に顕著な相違がみられる。ロリス類は緩慢な樹上性四足歩行を示し、発達した嗅覚を採餌で活用することで特徴づけられる一方で、ガラゴ類は俊敏な跳躍で樹間を移動し、獲物を捕らえる際には発達した聴覚が重要な役割を果たす。本研究では、前期中新統(約1800万年前)から産出した化石ロリス類Mioeuoticus shipmani (KNM-RU 2052)の生態的特徴の推定を試みることで、約3800万年前に分岐したロリス類とガラゴ類との間にみられる生態上の相違がどのような進化の過程によって生じたのかを明らかにすることを目的とする。生態学的特徴を推定する際には、脳エンドキャスト形態に注目した。脳は多様な感覚器・運動器を統合する場であるため、化石種からも取得できる脳エンドキャスト形態は生態学的特徴を推定するうえで有用である。脳エンドキャストの表面上に計測点をとり、座標データとして定量化した。それら座標データを主成分分析にかけ、グループごとの特徴を示した。その結果、現生ロリス類は嗅覚や視覚を担う脳部位が発達していることに対して、現生ガラゴ類は運動機能や聴覚を担う脳部位が発達しており、それぞれの生態学的特徴に対応した形態を示した。M. shipmaniを解析した結果、以上にみられたガラゴ類的な特徴とロリス類的な特徴との両方を脳部位ごとにモザイク状に有することが明らかとなった。以上の結果から、ロリス類とガラゴ類の初期の進化には現生種でみられるような生態学的特徴の明瞭な相違はなく、様々な特徴の組み合わせを有する多様な種が存在していたことが示唆された。その後、中新世にかけてアフロ・アジア大陸で多様化した他の霊長類との競合のなかで選択的な絶滅が生じ、その帰結として現在みられる顕著な相違が成立したと考えられる。
著者関連情報
© 2024 日本霊長類学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top