抄録
アカオザル(Cercopithecus ascanius)は母系の単雄複雌群を形成する樹上性オナガザル属の1種である。オナガザル属の仲間は似た社会構造を持ち、単雄群であることもあってオス同士は敵対的であると言われている。また、ハレムオスは社会的に周辺化しており、メスや未成熟個体との近接も少ないことが分かっている。ハレムオスと移出前のオスの関係もこの延長上にあり、例えばブルーモンキー(C. mitis)では群れ内の未成熟オスはハレムオスを避けることが知られている。しかし、タンザニアのマハレ山塊国立公園に生息するアカオザルではやや異なる関係がみられた。本発表では、近接データを用いてハレムオスとワカモノオスが親和的な関係を築いていることを示す。
2022年10月~2023年3月にアカオザル1群の観察を行った。オトナオス1頭、オトナメス6頭、ワカモノ(5歳以上)4頭の計11頭を対象に個体追跡を行い、5m以内の近接個体を記録した。なおこの群れのワカモノはすべてオスであった。各ダイアッドで追跡時間に占める近接時間割合を算出し、親和的関係の指標とした。社会ネットワーク分析で固有ベクトル中心性を算出し、近接ネットワークで中心的な位置を占める個体を調べた。
結果、オトナオスの中心性が最も高く、群れの中心的な個体となっていることがわかった。中でもオトナオスと特定のワカモノオスの近接が特に多かった。このワカモノオスは移出間近と考えられる推定7~8歳の個体であり、オトナオスとは血縁がない可能性が高い。他のワカモノオス3頭は推定5~6歳で、同様にオトナオスとの血縁関係はないと考えられるが、この3頭もメスや同年代のワカモノオスと同程度の割合でオトナオスと近接していた。オナガザル属でこのような親和的なオス間関係が見られることは珍しい。なぜマハレでオス間の近接が多いのか、考えうる要因についても検討する。