抄録
ニホンザルの遺伝的多様性を保全するためには,地域個体群間(群れ間)のオスの移出入が重要であると考えられている。しかし、ニホンザルのオスの分散や移動について詳細に分析した研究はわずかである。報告者は昨年,オスの移動距離と移動ルートについて報告した。引き続き GPS発信機を装着し年間の移動距離と群れから離脱した季節について分析したので報告する。兵庫県内の地域個体群、美方(n=9)、城崎(n=7)、篠山(n=2)大河内・生野(n=15)、船越山(n=5)のオス亜成獣(4.5-5歳)計38頭にGPS発信機を装着し追跡した。さらにデータを補足するために,GPS発信機装着個体とは別に、兵庫県内で捕獲された成獣および亜成獣オス個体、計32頭のミトコンドリアDNA第2可変領域412bpを分析し出生群を特定し捕獲地点からの移動距離を算出した。分析したすべての個体が群れを離れ,他の地域個体群(群れ)に移動していた。距離は直線で最大105.3km、最小2.7km、平均24.8±16.7kmであった。5月〜6月に群れから離れ移動した個体が多かった。群れの広がりの季節性を調べるために調査対象群には複数の成獣メスにGPS発信機が装着してある。5月〜6月が最も群れが広がっていた。群れの広がりはフェノロジーの影響を強く受けていた。オスの群れからの離脱・移住と関係があると予想している。地域個体群の保全単位を考える上で、オスの移動頻度や移動距離が今後キーワードになると考えている。