霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
同所的に生息するゴリラ・チンパンジーの腸内細菌の発酵能力の比較
南川 未来Pierre Philippe MBEHANG NGUEMA土田 さやか牛田 一成半谷 吾郎
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 61

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抄録
野生霊長類は季節によって食物の利用可能性が大きく変動する生息環境において、効率よく栄養を摂取できるように適応している。霊長類の多くは植物食を主とするにも関わらず、宿主自身は食物繊維を消化する酵素を持っていない。代わりに食物繊維を分解し、宿主が栄養として吸収できる短鎖脂肪酸を産生する働きを担うのが宿主の持つ消化管内細菌である。本研究の対象である中央アフリカに同所的に生息する大型類人猿のゴリラ・チンパンジーは、異なる食性を示すことが知られており、ともに果実・葉を主食とし昆虫も食べるが、ゴリラは年間を通して葉食傾向であるのに対し、チンパンジーは果実利用可能性が低い時期でも果実への依存を続ける。本研究ではこの食性の差が現れる要因の一つとして宿主の持つ腸内細菌に着目した。両種の食性の違いをふまえ、「大型類人猿は食物条件に応じた消化能力を持っている」という仮説のもと、ガボン共和国のムカラバ-ドゥドゥ国立公園に生息するゴリラ・チンパンジーを対象に果実2種・葉2種・髄1種・固形飼料を基質とした試験管内発酵実験を行った。試験管内発酵実験は糞便の懸濁液に葉、果実などの食物資源を基質とし、腸内細菌の発酵により産生されたガスの量と短鎖脂肪酸の量を発酵能力の目安として測定するものである。その結果、ガスの産生量は用意した基質のうち4種類でチンパンジーで有意に高かった。一方で、短鎖脂肪酸の産生量の目安として測定した実験前後のpHの変化量は、すべての基質でゴリラの方がチンパンジーよりも高い傾向があり、特にゴリラの採食を直接観察した葉を基質とした場合に有意に高かった。発酵能力の目安として測定した2項目で結果に食い違いが生じたことから、ゴリラとチンパンジーで発酵様式に差がある可能性がある。本発表では、基質ごとに結果をまとめそれぞれに対する宿主ごとの腸内細菌の発酵能力について考察する。
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