抄録
近年,霊長類の種数は増加の一途をたどっている。種数の増加傾向は霊長類に限らない。種数が増えるおもな原因は,新種の発見・記載ではなく,分類の見直しによって細分化が進んでいることによる。種数の増加に対し,和名をつける努力が重ねられてきた。長年にわたり哺乳類の和名のリファレンスとなってきた『世界哺乳類和名辞典』(今泉,1988)に掲載された霊長類は181種。『サルの百科』(杉山編,1996)には241種,『新しい霊長類学』(京都大学霊長類研究所編著,2009)には伊藤と西村による353種の和名リストがつけられている。その後も種数の増加傾向が続いていたことを受け,日本モンキーセンターではワーキンググループを編成して新たな和名リストの編纂に取り組み,2018年3月に447種からなる「日本モンキーセンター 霊長類和名リスト」を公開した。これについては2018年の第34回日本霊長類学会大会で報告した。この和名リストは『霊長類図鑑 サルを知ることはヒトを知ること』(日本モンキーセンター編,2018)に掲載されたほか,『霊長類学の百科事典』(日本霊長類学会編, 2023)においても、種名を記載する際は当リストの和名が採用された。それから5年が経過し,種の細分化はとどまることなく続いていること,また『霊長類図鑑』増補改訂版の制作が決定したことにともない,このたび和名リストの改訂に取り組んだ。新しい和名リストは前回同様IUCN Red Listを底本とした。2018年のリストに掲載した和名は原則として変更せず,新規に追加された種に和名をつけることとし,最終的に524種のリストとなった。多数の種を追加した一方で,2018年のリストから9種が種の統合によって脱落した。また,属以上の高次分類群にもかなりの異動がある。本発表では,この新しい霊長類和名リストについて報告する。