霊長類研究 Supplement
第40回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
金華山島のニホンザルB1群における行動圏を越えた隣接2群への追随事例
山口 飛翔
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 65

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抄録
宮城県金華山島のニホンザルB1群では、2019年以降第一位オスのTYが群れと共に行動したり、群れから離れて行動したりを頻繁に繰り返すという特異な行動が観察されている。これまでの観察から、こうした彼の行動は繰り返し群れの離合集散を引き起こすなど、B1群の動向に大きく影響していることが分かっている。本発表では、2022年に新たに観察された、TYに起因すると思われるB1群の行動圏を越えた隣接2群への長時間追随事例を報告する。2022年9─11月にB1を14日間追跡し、10月3─5日の間にD群に、11月20日にB2群に追随し続ける様子をそれぞれ23時間26分と8時間29分観察した。この間、B1群はほとんどの時間を自群の行動圏外で過ごした。隣接群への追随中、TYが自群のメスと社会交渉を行ったり、彼女たちが自身に追随しているかを確認したりすることはほとんどなかった。一方で、隣接群のメスに対しては接近やリップスマッキングを頻繁に行った。また、隣接群への追随中は、それ以外の時間よりもTYの木揺すり行動が顕著に増加した(0.72回/時間 vs 0.02回/時間)。以上の結果は、TYが交尾機会を求めて隣接群に追随したことを示唆する。TY以外のB1群個体は、基本的に隣接群に追随するTYに追随し続けた。しかし、B2群追随時は観察終了まで全個体がTYとともに観察された一方で、D群追随時は次第に彼とともに観察できる個体数が減少し、最終的に約半数になった。このときTYに追随し続ける割合が高かったのは、TYとの複合社会性指標(CSI)が高く、彼と親密な関係を持つ2頭のメスの家系の個体だった。こうした個体は、TYとともに行動することで交尾期に頻発するオスからの攻撃を減少させていたと考えられる。一方で、行動圏を越えるというリスクを冒してまで彼に追随した理由を明らかにするためには、さらなる調査が必要である。
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