抄録
日本モンキーセンターでは、1956年12月に屋久島よりヤクシマザル(Macaca fuscata yakui )79頭を捕獲し、飼育が開始された。1957年3月には81頭を大平山(犬山野猿公苑)に放飼し、1997年4月から現在に至るまでは、主にモンキーバレイとよばれる屋外擁壁タイプの施設での群れ飼育が継続されてきた。そのなかで1957年の初代から現在の17代目に至るまでのアルファオス(以下、アルファ)が記録されてきた。アルファとなった個体の年齢にはばらつきがあったため、発表ではアルファとなった年齢と群れの頭数や年齢層分布の関係性を探ることを目的とし、過去の飼育個体の記録、日誌、家系図等の資料を調べまとめた。アルファとなった年齢が記録から確認できた11頭のうち最年少はミンクという個体で7歳、最高齢はヒトデという個体で24歳であった。アルファの地位を最も長く維持できたのはポルとスルメという個体で、ともに10年間であった。また、群れの性比、年齢、頭数などの正確な情報の記録が確認できた1997年以降にアルファとなった個体たちの年齢と当時の群れ構成との関係を調べた。24歳のヒトデがアルファとなった時期は群れ内のおとなオス(7歳以上)が25頭(群れ全体の18.7%)であり、16歳のスルメという個体がアルファとなった時期は群れ内のおとなオスが21頭(群れ全体の22.6%)、13歳のタイマツがアルファとなった時期は群れ内のおとなオスが33頭(群れ全体の23.2%)、8歳のヒラマサという個体がアルファとなった時期は群れ内のおとなオスが51頭(群れ全体の37.5%)であった。群れ内のおとなオスの割合が高くなると、アルファとなる年齢が低くなる可能性が示唆された。アルファとなる要因は他にも他のオス個体やメス個体との関係性なども考えられ、今後はその要因をさらに探るため過去の飼育歴の詳細なデータを収集する。