抄録
マーモセットは樹脂・樹液(gum)を嗜好することが知られているが、その分子的な機構は明らかになっていない。我々はgum中に含まれるカルシウムとその受容体CaSRおよびTAS2R7という二つのGタンパク質共役型受容体(GPCR)に注目して、機能解析等を行った。
まず、様々な樹種のgumに対してCaSRの応答を検討したところ、含有カルシウム濃度に応じてCaSRの活性化が観察された。カルシウムはヒトには苦く感じるが、その分子機構は苦味受容体TAS2R7がカルシウムに反応するためである。TAS2R7の反応性をマーモセットとヒトで比較したところ、ヒトのTAS2R7はカルシウムに応答するのに対して、マーモセットのTAS2R7は反応しなかった。また、マーモセットの舌におけるCaSRの発現細胞を免疫染色法を用いて検討したところ、腸管と同様に内分泌細胞マーカーと共染色されたが、甘味や苦味を受容する味細胞には発現していなかった。これらの結果から、マーモセットのgum嗜好性は内分泌細胞に発現しているCaSRを介して形成され、TAS2R7による苦味は感じないことが示唆された。