抄録
小型霊長類のペットのための違法取引が、野生個体群の減少や動物福祉などの問題につながっている。しかし、その認識は一般には必ずしも広まっていない。過去の調査で、当該問題に関する漫画形式の教育教材を作成して評価したが、十分な効果があると言えない結果であった。そこで、様々な場面で利用可能な教育教材を作成するために、ターゲットとなる利用者側の視点を取り入れた新しい教材を作成することを試みた。作成にあたっては、京都市動物園の実習生(大学生3グループ合計10名)を対象に、教材作成に関するディスカッションセッションを行った。具体案は複数出てきたが、その中であげられた「端的に短く」「興味をひくためのものと詳細情報を分ける」「人と動物双方への影響を示す」などのキーワードをその後の教材作成に取り入れた。さらに、複数の動物園における使用可能性を考慮して、①展示場用、②教育プログラム用、③場所を選ばず使用することを想定した3種類のイラストレポート形式の教材を作成した。イラストレポートには、ペット取引の保全・動物福祉・自分・社会への影響の4つの視点を取り入れた。2024年3月2日及び3日に京都市動物園で、予備的な評価をし、教材にフィードバックするためにインタビュー調査を行った。ショウガラゴを対象種として、動物写真と教育教材を使用して21組の一般来園者から聞きとりを行った。ショウガラゴのイメージ・ペット取引に関する問題認識・教材のアプローチで印象に残ったところについて意見を求めた。結果として、ショウガラゴ自体を知っているのは、21組中11組でペット取引の問題については21組中5組が認識していた。また、教材に含まれていた保全・動物福祉・自分への影響・社会への影響に関する内容ついて、同程度の関心が向けられた。効果が見込める可能性を把握できたが、今後は想定した場面における評価を行っていきたい。