抄録
宮城県ではニホンザルの群れの適正な管理を図るため、県が定める判定基準により群れ毎に評価を判定している。評価は主に直接観察により把握された群れの行動特性から判定される。これまで、市町村担当者等への聞き取り調査や追跡調査の実施により評価が判定されてきたが、複数の群れの行動圏が重複する地域では群れが特定できない等の理由で聞き取り調査による評価の判定が困難な場合がある。一方で、一部の群れでは行動圏や利用地域の把握を目的としてGPS首輪を用いた調査が実施されている。本研究では、GPS首輪により収集した測位データが群れ評価の判定材料として活用が可能であるかを検討した。
2019年から2023年までに、群れの生息状況のモニタリングを目的として県内に生息する複数の群れのメス個体にGPS首輪を装着した。そのうえで追跡調査を実施し、直接観察から群れ評価を判定した。GPS首輪の測位地点から植生利用比率を算出し、群れ評価と比較した結果、評価が高い群れに対して評価が低い群れは「市街地等」や「耕作地」の利用比率が高くなった。また、同一群で複数年における評価と植生利用比率を比較した結果、過去に比べて評価が低くなった群れの一部では、「市街地等」や「耕作地」の利用比率が高くなった。
結果から、GPS首輪により収集したデータは評価項目の一部では判定の補助材料として活用できると考えられた。また、同一群における植生利用比率の経年的な変化は、群れの行動特性の変化やそれに伴う群れ評価の変動を示す指標となり、追跡調査の実施を判断するうえでの検討材料となり得ることが示唆された。