抄録
スフィンゴ脂質の代謝異常は、様々な精神疾患に関与することが示唆されている。複数のコホートを用いた大規模解析により、スフィンゴ脂質の代謝に関連する複数の遺伝子の多型が、ヒトにおける注意欠如・多動症(ADHD)のリスクと関連することが報告されている。リスクとの関連が報告された遺伝子の1つに、ガラクトシルセラミダーゼ遺伝子(GALC)がある。本研究ではGALCの多型が脳の構造に及ぼす影響を検討することを目的として、カニクイザルおよびアカゲザル計64個体を対象に、GALCの多型解析と、MRIによって得られた脳構造データとの関連解析を実施した。カニクイザルおよびアカゲザルのGALCについて,ヒトでADHDとの関連が示唆された多型がある領域と相同な領域の配列決定を行い、当該領域近傍のイントロンにカニクイザルで2箇所、アカゲザルで1箇所の一塩基多型(SNP)を確認した。これらのSNPの遺伝子型と、MRI画像から求めた全脳皮質厚および全脳ミエリンコントラストとの関連を解析した。遺伝子型を説明変数、年齢を共変量とする共分散分析を実施した結果、全脳皮質厚および全脳ミエリンコントラストともに年齢の影響はみられたものの、遺伝子型との有意な関連はみられなかった。今後は脳領域別の分析を進めるとともに、他のスフィンゴ脂質代謝関連遺伝子の影響や、行動指標との関連も検討する必要がある。