抄録
ヒトの虹彩は青色から茶色までさまざまな色を示す。虹彩色の多型は、メラニン色素の沈着量や、それを規定する複数の遺伝子の発現の違いによって生じていることが知られている。これまでにヒトの虹彩色は茶色や青色の割合が高いことや、OCA2、HERC2などの遺伝子が虹彩色と強く関連していることが明らかにされている。しかし、ヒト以外の霊長類の虹彩色の種内変異についての研究は少なく、遺伝的基盤についてもはっきりしたことがわかっていない。本研究では虹彩色の多型が知られている香川県小豆島の準野生ニホンザルを対象とし、虹彩色の多型評価とその遺伝的基盤の検討を行った。2群に所属する95個体の写真を使用し、ソフトウェアJust Color Pickerを用いて虹彩内の3点の色を0~360°のHSV色空間で評価した。ヒトで虹彩色との関連が示されている一塩基多型座位を含み、霊長類種間で保存されている領域であるHERC2遺伝子イントロン86の塩基配列を取得した。虹彩色評価の結果、色相が概ね黄―赤色に該当する0-80°を示した個体が多かった。青系統色に該当する150-250°を示した個体は5個体のみであり、ヒトや過去の調査群と比べて青目個体の割合が低いことが示唆された。本発表では、遺伝分析の結果も含めて予備的な分析結果を報告する。