抄録
動物園や地域社会でおこなわれる環境教育では、知識や技能の習得だけでなく認識や態度の変化も重要だとされる。しかし知識や技能に比べ認識や態度は測定が難しい。霊長類を題材とする場合、動物園、野猿公苑、獣害、エンターテイメント、昔話、霊長類研究の成果発信など人々が触れる情報は多岐にわたり、霊長類に対する動物観も多様であることが予想される。そこで本研究では霊長類に対する素朴概念の多様性を把握することを目的に、自由連想法による調査をおこなった。2015~2024年(2020年を除く)の春の土日・祝日に日本モンキーセンターにおいて、入園前の来園者に「霊長類(サルのなかま)」を刺激語として想起された言葉を5つ挙げてもらった。得られたデータに表記ゆれや類似語の統一などの事前処理をおこない、年齢層、来園回数、年を外部変数に加え、抽出語の最小出現数を8、共起関係距離にJaccard係数を用いKH Coder 3で分析した。合計1,085件の回答のうち有効な934件、3,552語を分析対象とした。出現回数の上位は「バナナ(273)」「賢い(209)」「かわいい(176)」「木登り(163)」「頭がいい(154)」だった。共起ネットワークおよび階層的クラスター分析では「バナナ」「木登り」「おしりが赤い」など表面的な物や状態に関する語と、「賢い」「かわいい」「人に似ている」など内面や印象に関する語が別のクラスターを形成した。ネガティブな表現では「凶暴」「うるさい」は同じクラスターを形成したが「怖い」は別のクラスターに分類された。来園回数との対応分析では「1回目」で「国内の生息地」「怖い」「元気」などが、「6回以上」で「海外の生息地」「感情・個性」などが特徴的だった。今後はこれらの中から動物観を特徴づける項目を抽出し、動物園以外での調査結果も加え、多様な場面で使用・比較できる動物観尺度を作成したい。