抄録
霊長類研究が持続的に発展するためには,若い世代に魅力を発信し,進路の選択肢として認識される必要がある。日本モンキーセンター(JMC)では,学校と連携して霊長類研究の成果に触れつつ学ぶ教育プログラムを開発,実践している。小学校や中学校の理科教育プログラムについては,日本霊長類学会大会などで報告してきた。小中学生向けプログラムは霊長類自体に関心をもつきっかけとなるのに対し,高校生へのアプローチは,進路決定に直接的な影響を与える可能性をもつ。本発表では高校団体によるJMCの利用状況を概観し,霊長類研究の裾野を広げるのに有効な方策を検討する。JMCに来園する高校団体は,1)少人数の生徒による研究活動,2)小規模の団体による教育プログラムの受講,3)大規模の団体による教育プログラム受講,4)レクリエーション等を目的として教育プログラムを受講しない団体,の4類型に大別される。2018年度から2024年度までの7年間に,1)については例年2校ほどから数名ずつが来園して研究活動を実施し,一部は日本霊長類学会大会で発表をおこなっている。2)は46件で,平均人数は19.9人であった。3)はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)のような活動支援がないと困難で,愛知県立明和高等学校の1例のみである。4)は10件,平均人数は94.1名だがばらつきが大きい。高校生への普及効果で見ると,1)はすでに関心をもつ層なので,活動支援以上のことは不要である。3)は機会が少なく,4)は学ぶ意欲がないと関わるのが難しい。訴求しやすいのは2)の小規模団体となり,現状と合致する。2)の団体は生物選択者や理数科,SSH履修生から有志を募るなどして来園するケースが多い。小規模団体には,指導が行き届き学習効果が高いというメリットがある。2022年度から導入された「総合的な探究の時間」での活用を促すことも有効だと思われる。