抄録
公益財団法人日本モンキーセンター・モンキーバレイに飼育されているヤクシマザル (Macaca fuscata yakui) 個体群を対象に,2024年生まれの3個体および2023年生まれの3個体の社会関係と池の利用行動の特徴を明らかにすることを目的として観察を実施した。2024年生まれの個体を対象に,5分間隔の瞬間サンプリング法を用いて,活動内容(静止,移動,不明行動,採食,被毛づくろい,毛づくろい)と,1m以内の近接個体数を記録した。また,全個体を対象に,池または川の水に身体の一部が接触した場面を,生起・瞬間サンプリング法により記録した。記録項目は,個体の生年(2024年,2023年,2022年以前),時刻,接触部位,および活動内容(飲水,採食,給餌物の浸漬,静止,移動)とし,同一個体による行動が1分以上継続した場合は再度記録を行った。観察は2024年11月10日から2025年4月5日までの5日間,計10時間30分実施した。2024年生まれの個体の活動時間割合の内訳は,静止41.0%,移動33.3%,不明行動10.3%,採食7.7%,被毛づくろい6.8%,毛づくろい0.9%であった。1m以内の平均近接個体数は,同年齢個体が0.18±0.04(標準誤差SE)頭,1歳年上の個体が0.05±0.02頭,それ以上の年齢の個体が1.21±0.13頭であった。年齢階層ごとの個体数で補正した結果,同年齢個体との接近率が最も高く,生後半年から1年齢の時期には,同年齢での社会関係構築が活発であることが示唆された。池における行動のうち,採食行動の割合は2024年生まれおよび2023年生まれ個体で13.5%,2022年以前生まれ個体で6.1%となり,若年個体の方が頻繁に水辺で採食行動をしていた。また,水に接触しながら静止する割合も,2024年生まれおよび2023年生まれ個体で多く観察され,遊びや探索的行動の一環である可能性が考えられた。