抄録
明和高校SSH部生物班は2021年4月より明和高校周辺に生息する野生動物の生態調査を行っている。これまでの調査の結果,タヌキ,キツネ,ハクビシン,アナグマなど多くの野生動物の生息が確認されている。その中で,2024年に初めて疥癬症に感染したタヌキを確認した。疥癬症はヒゼンダニが皮膚に穿孔して感染する皮膚感染症で,野生動物にとって疥癬症は致死的な疾患である。また,ヒトや家畜動物など多くの動物種に感染することが知られている。これまでに明らかになった健常体タヌキの行動特徴と比較することで,疥癬症に感染したタヌキの行動特徴を明らかにし,それに伴う他の野生動物の行動変化を調査し,感染したタヌキによる周辺の生態系への影響を評価することを目的とする。
これまでの調査で健常体タヌキの行動特徴として,夜行性であること,夜間のうち,日の出・日の入りの時刻に行動回数が増加する傾向があることがわかっている。疥癬症タヌキはこれらとは異なる行動をすると仮説を立て,調査を行うことにした。調査方法は,タヌキのためフン場に以前より設置してあるセンサーカメラで撮影した画像から,動物名,撮影日時,時刻をまとめ,時刻毎の出没回数をグラフにした。その結果,疥癬症タヌキは昼間の出没割合が高く,そのつがいと考えられる健常体タヌキも同様に昼間の活動が増えたことがわかった。また,別の場所に設置したセンサーカメラに疥癬症タヌキが撮影されていないことから,疥癬症タヌキの行動範囲が狭くなった可能性がある。これらのことから,疥癬症タヌキは他の野生動物と接触しない行動特徴があることが示唆される。ハクビシンやキツネなど,他の野生動物の行動調査の結果も合わせて検討していく。