霊長類研究 Supplement
第41回日本霊長類学会大会
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口頭発表
宿主の種と環境要因 腸内細菌叢により強く影響するのはどちらか
-タイワンザルとニホンザルの比較研究-
南川 未来リー ワンイ半谷 吾郎
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 58

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抄録
腸内細菌叢は,遺伝的な宿主要因や食性などの環境要因により影響を受け,柔軟に変動することが知られているが,宿主の種と環境要因のどちらが強く影響するかはまだ定かでない。そこで,本研究では,タイワンザルの野生群・餌付け群・飼育群のそれぞれで糞便サンプルを採集し,既に報告されているニホンザルの野生群・餌付け群・農作物利用群・飼育群で腸内細菌叢の組成が有意に異なることを明らかにした研究(Lee at al. 2019)と比較することで,近縁種間で宿主の種と環境要因のどちらが腸内細菌叢の組成に強く影響するかを調べた。野生のニホンザルの研究はこれまで数多くなされてきた一方で,野生のタイワンザルの研究はまだ少なく,特に腸内細菌についてはまだ研究がない。多くの霊長類が熱帯地域に生息するなか,温帯地域に適応しているニホンザルは例外的であるが,タイワンザルは,温帯と熱帯の中間に分布する点で興味深い。そのため,タイワンザルの野生群を含め比較検討することで,腸内細菌を介した環境への適応についての理解を深めることができる。16S rRNA遺伝子 V3-4シーケンス解析により,両種について腸内細菌叢の比較を行ったところ,野生・餌付け・飼育の環境要因は,宿主の種よりも強く影響し,両種の腸内細菌叢は環境要因によってよりまとまってクラスター分けできることが明らかになった。特に野生群同士の類似度が高く,飼育群同士での類似度は比較的低かったため,食性の差が強く影響していると考えられる。このことから,ニホンザルの近縁種であるタイワンザルでは,ニホンザル同様に環境によって腸内細菌叢が変動し,多様な環境に適応していることが示唆された。本研究は,同属の近縁種が同様の環境に置かれたときに,類似した腸内細菌叢を形成することを示す一例を提示する。
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