抄録
干潟整備の順応的管理の観点から地形の動的平衡に着目し, 干潟の代表的生物であるアサリ初期稚貝 (殻長3-5mm) の地形変動に対する許容範囲を把握することを目的に, 造波水槽を用いて実験を行った.アサリは砂面変動に対して潜砂行動で追随したが, 砂面変位速度が6mm/mm.を超えると追随できずに全て流出した.また, アサリの潜砂行動周期と1回あたりの潜砂深度は殻長に比例し, 算出された潜砂速度 (4.3mm/min.) は流出を回避し始める砂面変動速度とほぼ一致した.さらに, 緩やかな砂面変動が発生する波浪条件下では, 静水条件下よりアサリ初期稚貝の生長率は大きく, 底質の撹乱が必要であることが明らかになった.