抄録
近年, 堤防や護岸の一部を撤去して沿岸の未利用地に海水を導入する環境再生手法が議論されているものの, 単なる堤防撤去は流入負荷を海域にそのまま放流し海域の環境悪化を招く懸念があるため, 海域まで含めた環境影響を検討する必要がある.そこで, 沿岸未利用地への海水導入が水質・底質変化に与える影響をシミュレーションにより検討した結果, 単に未利用地へ海水を導入すると海域の水質・底質が悪化すること, 未利用地に干潟を整備し浄化能力を上げることにより海域の水質・底質の悪化が効率よく低減できることが明らかになった. さらに, 未利用地への流入負荷から干潟浄化能を引いた正味の流入負荷により海域の水質・底質を統一的に説明できることが示された.