保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
陸水域における生物多様性モニタリング
地理空間情報から推定した野生生物の生育・生息場所としての小規模止水域の空間分布
木塚 俊和 石田 真也角谷 拓赤坂 宗光高村 典子
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2016 年 21 巻 2 号 p. 181-192

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抄録

農業用ため池、泥炭地の池溏、河川氾濫原のタマリ、河跡湖、湖に連結した内湖などの小規模な止水域は生物多様性の維持において重要な役割を果たしている。本研究では、公開されている最新の地理空間情報をもとに、地理情報システム(GIS)を用いて野生生物の生育・生息場所として期待できる小規模止水域の分布を推定し、その相対的な多寡を全国スケールで評価することを目的とした。具体的には、縮尺1/25,000の地形図に記載されているすべての開水面のポリゴン(面)データから、天然湖、ダム湖、河川・入り江を除外した。さらに、下水処理場、工業用地、ゴルフ場などに含まれる、野生生物の生育・生息が期待できない水域を除外した。二次メッシュ(約10 km四方の区画)毎に集計した結果、本研究の定義に該当する小規模止水域は日本の陸域に広く分布する一方、多数が集中するメッシュが存在することも示された。とくに、農業用ため池が多数存在する瀬戸内海沿岸では、小規模止水域が1メッシュあたり442?903箇所と高密度に分布していた。現地調査のデータがある兵庫県北播磨・東播磨地域を対象に本手法の抽出精度を調べた結果、小規模止水域数の抽出率は99.2%、抽出漏れ率は0.8%だった。本手法により整備した小規模止水域のGISデータは生物多様性評価に有用な基礎資料となるだろう。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会

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