抄録
確率台風モデルを用いて現在と地球温暖化後の将来の気候下における台風の条件を与え, それぞれの台風に対する瀬戸内海の高潮を数値計算モデルで計算し, 得られた高潮偏差や天文潮位と重ね合わせた潮位の極値分布を調べた.現在の気候を仮定した500年間のシミュレーションの中にも, 現行の高潮対策施設の想定を超える高潮偏差を発生させる台風が現れた.また, 地球温暖化に伴う台風特性の変化によって瀬戸内海の高潮偏差の極値は増加するが, その傾向はもともと高潮の顕著な海域で強い.台風特性の変化と平均海面の上昇によって潮位の極値も高くなるが, 大阪では台風特性の変化, 高松では平均海面の上昇が大きく寄与すると考えられる.