抄録
夏季の有明海奥部において, 現地観測によって1潮汐間の正味の懸濁物フラックスの分布を求め, 輸送される懸濁物の質について分析した. 懸濁物は湾奥向きに輸送され, 躍層が海底に接する地点の沖側に集積していた. このような輸送は, 主に底層で湾奥に向く残差流によって生じていた. 湾奥に輸送される懸濁物は平均9%の有機炭素を含んでおり, その半分は陸起源と考えられた. 潮汐周期内では, 懸濁物は活発に沈降・再浮上を繰り返していた. また, 懸濁物の集積域は貧酸素水塊に一致していた. 有機懸濁物質が湾奥に輸送, 集積され, 沈降・再懸濁を繰り返していることは夏季の有明海奥部に貧酸素水塊が形成されるための重要な機構ではないかと考えられた.