抄録
唯一解が存在しないといわれる科目のひとつに技術者倫理がある.この科目の特徴は,工学分野に位置づけられつつも唯一の解ではなく,状況に応じた最適解を導き出す必要がある.すなわち,履修においては専門用語の理解や模範的解答を導き出すことができる”行為目標”以上に,実社会でその思考が実際の行動に反映させることができる”成果目標”を重視する必要がある.そして,そのような倫理観を涵養するためには,過去の事例分析やグループによる討論が効果的である.本研究では,この授業にオーディエンスレスポンスシステム(ARS)を活用し,その学習効果を評価した.学生自身の解答がリアルタイムで視覚化されることにより,授業進行における連続性が保持されるため能動的な学習姿勢を促すことができる.とくに,ケーススタディのおグループ発表では,発表技術や発表内容がリアルタイムで視覚化されることで,学生自身が主体的かつ能動的に発表を聴講することに役立った.他者の多様な価値観を理解しながら自身の結論を導き出すことに効果的だった.