抄録
日本の卵の消費量は世界4位で1人当たり年間320個消費しているが,その内,80%の卵殻(年間25万トン)が廃棄物として生まれている。
我々は,企業から提供して頂いた廃卵殻を用いた多孔体の研究開発を行ってきた。当該企業ではうずら卵の水煮缶などを製造し,一日約100万個,年間約3億個のうずら卵を加工している。うずら卵殻の廃棄量が約1.5トン/日,鶏卵殻の廃棄量が約1トン/日に及び,これらの廃棄処理に膨大な予算を投じている。そこで,我々は廃棄卵殻を付加価値の高い多孔体として再利用し強アルカリ水を得ることに成功した。
当初,高温焼成による気孔率の低下(比表面積の減少)と酸化カルシウムの生成による,強アルカリ溶液化の阻害を懸念したが,酸化カルシウムからの水酸化カルシウムの生成で,強アルカリ側に推移することが判明した。また,高温焼成による気孔率低下が多孔体強度を向上させた。鶏卵,うずら卵の双方において同様の傾向が認められた。
このようにして作製した多孔体の応用として
1. 強アルカリ温泉への利用
2. 酸性雨により弱った土壌の中和改質
等を提案している。