抄録
近年、建物内の電力消費の中で照明が占める割合は依然として高く、持続可能な社会の実現に向けて照明の省エネルギー化が求められている。本研究では、人間の視覚が周囲の明るさに応じて順応する特性(目の順応)に着目し、この性質を照明制御に応用することで、視環境の快適性を損なうことなく照明の消費電力を低減する手法を提案する。具体的には、周囲照度や視対象の明暗変化に応じて照度を段階的に調整するアルゴリズムを設計し、実験環境下での被験者評価と消費電力の計測により効果を検証した。その結果、従来の一定照度方式に比べて、視認性を保ちながら約20〜30%の電力削減が可能であることを確認した。本研究は、人間中心の照明制御による新たな省エネルギー手法としての可能性を示すものである。