抄録
DRIFTとは,IoT侵入検知向けに設計され連合学習(FL)のフレームワークであり,Federated Feature Selection と Federated Quantile Transformer からなる2段階の前処理パイプラインを通じて,クライアント間のデータの異質性に対処する。既存研究では,すべてのFLクライアントが honest-but-curious な振る舞いをすることを前提としており,前処理段階に対する能動的な敵対的操作を考慮していないため,セキュリティ評価が不十分である。そこで本研究では,この前処理段階を標的とした3つの脅威シナリオを設計することにより,DRIFTのセキュリティ評価手法を提案する。脅威シナリオAは,相互情報量を用いて選択された攻撃対象クラスの判別に重要な特徴次元の値を,統計的に曖昧化する特徴量ポイズニング攻撃である。脅威シナリオBは,前処理済み特徴量空間において,攻撃対象クラスの分布を正常クラスの中心点に向かって線形補間する分布シフト攻撃である。脅威シナリオCは,学習用データの攻撃対象クラスのサンプルを,正常クラスとして再ラベリングするラベル反転攻撃である。N-BaIoTデータセットを用いた評価の結果,検討したパラメータ範囲内において,脅威シナリオAによる性能の低下はごくわずかでり,DRIFTが特徴量ポイズニングに対して一定の堅牢性を維持していることを明らかにした。対照的に,脅威シナリオBは,攻撃強度の増加に伴って攻撃対象クラスの検出性能を著しく低下させ,脅威シナリオCは,ラベルが完全に反転した場合,検出性能を壊滅的なまでに低下させることを明らかにした。したがって,DRIFTはラベルと特徴分布の対応が崩される攻撃に対して明らかな脆弱性を有していると考えられ,DRIFT特有の事前処理機構に合わせた防御戦略が必要であると考える。