抄録
社会資本整備は、国の社会経済の発展を通して、国民の生活と生産活動を支える。整備の事業は、比較的巨額な公的・民的資源を必要とし、事業執行の諾否を検証・決定するまでの認知段階と事業を実体化する執行段階を踏んで実施される。資源の多くは、事業の設計と施工を含む執行段階に投入されるので、そこでの活動の効率性と透明性を最適化することが、事業に対する国民の合意と支持に大きく関わる。事業執行には、多くの利害関係者が関わると共に、自然条件などが想定と異なる不測事象 (unforeseen site conditions) が発生するので、事業成果を産みだすエンジニアリング技術に加えてその適用を監理するマネジメント技術が求められる。海外で多用されるFIDICの契約形態は、不測事象を許容しつつその対処を、施工者のクレームを通して、発注者・施工者に加えてエンジニアを入れた三者執行形態によって監理することが、効率性と透明性を最適化する仕組みとしている。日本は、官を主体とした二者執行形態によって、経済大国と呼ばれる高度成長を達成して来たが、内外の環境変化にその形態が則さないと認識されつつある。世界の中の日本として、日本の比較優位を活かしつつ、三者執行形態を含む契約形態の改善を図ることが、特に途上国の社会経済成長を支援しつつ、相互依存による日本経済成長の持続に貢献すると考えられる。