抄録
今日、日本における公共投資は縮小傾向にあり、地方自治体の財政状況は逼迫し、建設業においては、これまでの右肩上がりの発展は期待できないといった先行きの不透明感が厚い雲のように覆っている。そういった状況で、少ないパイを取り合うことにより、利益率の低下が著しく、建設業において工事によって利益を発生させることが、非常に厳しい状況になってきている。日本と比較して、欧州では公共投資の規模は縮小しており、欧州の企業がそのような環境下でどのように立ち居振舞っていたかということは、今後の日本の建設業が直面するであろう状況にいち早く直面した前例として非常に興味深い。一方で、わが国の製造業に目を向けると、海外の市場に進出し活発に企業活動を行っている企業を多く見ることができる。それらの状況から、本研究においては、海外の建設会社と日本の総合建設業を比較し、また日本の総合建設業と他産業を比較することで、現在の総合建設業の経営的特徴を明らかにし、利益率や売上高といったマクロ的な視点から今後の総合建設業の海外進出のあり方について考察した。