抄録
本稿では、わが国のインフラ整備における行政官 (以後、「官」と略する) と国民との信頼関係の分析と信頼回復にNPOが果たしうる役割を検討した。旧来の官と国民との関係は「公私二元論」で表される。官の「無私と全能」と国民の「お上意識と滅私奉公」によって、旧来のインフラ整備では社会的不確実性と機会コストが抑制されてきた。しかし近年は、官における私が顕在化し、個人の「多面的」主張・行動によって、社会的不確実性と機会コストの双方が増大する可能性がある。官と個人の「改革」課題として、それぞれの「信頼性」を向上し、社会的知性を発達させ、他者への信頼を醸成していくことが求められる。
NPOが有する (1) 新たな主体としての資源の受入機能、(2) 私福の共福への「昇華」機能、(3) 官の監査機能は、官と個人の「改革」を促すと考えられる。さらに、「NPO活動成功の鍵は、共福・公福の計画策定 (Plan) への上手な参画にある」との仮説を導いた。具体的な検証は今後の課題としたい。