建設マネジメント研究論文集
Online ISSN : 1884-8311
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ロジックモデル (HELM) に基づく高速道路維持管理業務のリスク適正化
坂井 康人上塚 晴彦小林 潔司
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2007 年 14 巻 p. 125-134

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抄録

高速道路における維持管理業務として, 日常点検や路面清掃等がある. これら日常維持管理業務の成果は, 道路利用者に直接的な影響を及ぼす. 業務が適切に実施されれば安全性が確保され顧客満足度を保っことができるが, 適切に実施していない場合には事故や管理瑕疵等のリスクを招く可能性がある. 一方, 維持管理予算には限りがあり, 適切な範囲でのコスト縮減も求められている. そこで, 阪神高速道路の日常維持管理業務を効率的・効果的にマネジメントするため, 日常業務に関わる施策から成果までを体系化したロジックモデル (HELM: Hanshin Expressway Logic Model) を作成した. また, HELMにおけるアウトカム, アウトプット指標をモデル化し, 維持管理業務の継続的改善を実施するためのPDCAサイクルについて検討した. さらに, HELMを構成するアウトカム, アウトプット指標に対して, 望ましい管理水準を決定する方法を開発した. 本稿では, HELMの中から, 穴ぼこの発見や路面の土砂処理といった管理業務を事例としてとりあげ, リスク (発生確率×影響の大きさ) を用いた管理水準の設定方法について示した. その際, 管理水準を明確に線引きするのではなく, 種々の不確定要因を考慮してマージンを設定し, その中に収めることを目標とする考え方を示した. 以上の結果, 設定した管理水準に近づけるために, インプット (日常点検や路面清掃等) の頻度を見直し重点化を図ることにより, 結果的にリスクとコストの両者を下げることができることが判明した.

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