抄録
従来, 土木技術者は, 社会資本の供給を通じ, 社会や地域を支える役割を果たしてきた. 多様化する市民・地域のニーズなどの社会変化により, 土木技術者は, 社会資本整備の計画策定から運用・管理面までのマネジメントを考える上で, より社会・地域住民の意見に即した配慮が求められるようになってきている. そこで本稿では, 地域に根ざした活動における技術者の役割に着日し, ソーシャルキャピタルの視点から, その地域の課題とその問題解決に至る過程を考察することとした. その結果, 事前の地域のソーシャルキャピタルの多寡にかかわらず, 技術者が地域住民の意見を聞き, 理解されやすく, 受け入れやすい説明をすることで関係者間の信頼関係が醸成され, その後, 住民や行政と一緒になり, 社会資本の管理・運用のための規範 (制度やルール) の策定の調整・助言をすることにより, 信頼と規範ネットワークといったソーシャルキャピタルの要素が相互補完的に醸成され, 有効的に問題の解決がはかられる可能性が示唆された.