抄録
近年の公共事業に対する批判は、実際のニーズが現行の価値観や評価手法によって十分に反映されていないことに起因する。すなわち、インフラ評価の実践において、事業フロー効果に比べて施設ストック効果が必ずしも正当に評価されていないと思われる点、技術に諸学 (自然科学のみならず人文科学、社会科学も含む) が十分に活用されていないと思われる点、利用者を主体とした合意形成や運営方法といったソフト面が立ち後れている点などの問題があると考える。さらに、問題の深層を考察していくと、インフラ整備の本義である「公共性」とは何かを利害関係者とともに認識する必要があると考える。
そこで、本稿では、インフラ整備において公共性を確保するためには如何なる評価手法が必要であるかを考察し、公平性、分かりやすさ、融通性の3点を併せもつ評価手法を提案した。経済の自由化、個々人の価値観の多様化の動向の中で、公共事業の意味を「ノン土木」の人々とともに考え、具体化する上で必要となる全体の評価フレームを考察した。