環境システム研究論文集
Online ISSN : 1884-8125
Print ISSN : 1345-9597
ISSN-L : 1345-9597
河口に設置した人工内湖による汚濁負荷制御
中村 圭吾森川 敏成島谷 幸宏
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 28 巻 p. 115-123

詳細
抄録

霞ヶ浦に流入する川尻川の河口に設置された人工内湖は, 失われつつある湖沼の沿岸環境の復元と非点源負荷対策を目的としている. 人工内湖の面積は約30, 000m2 で, 水深は約1.0mである. 人工内湖の汚濁負荷削減効果について, 1999年から2000年にかけて調査を実施した. 人工内湖の水質は晴天時に湖沼と河川の中間的水質であった. 雨天時には, SSの11~54%, 窒素の7~17%(懸濁態窒素: 21~51%), リンの10~35%(懸濁態リン: 31~99%) を削減する効果があった. また, 人工内湖の年間負荷削減量を98年12月~99年11月の期間で推定した. 河川からの年間負荷流入量と底泥として人工内湖に新たに堆積した量より除去率を算出した. その結果, 流入負荷量に対しSSの191%, 窒素の19%, リンの83%が人工内湖に堆積していると推定された. SS除去率が10眺以上となったことは人工内湖が河川の流入負荷だけでなく, 霞ヶ浦のSSも除去していることが原因と推察された. このことは静穏な湖沼沿岸帯の復元が, 湖沼全体の水質浄化に大きく役立つことを示唆したものである. また, 窒素の除去率が低いのは, 脱窒により見かけ上低くなったと推定される.

著者関連情報
© 社団法人 土木学会
前の記事 次の記事
feedback
Top