環境システム研究論文集
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都市近郊における湿地の経時変化と鳥類の生息状況
百瀬 浩木部 直美藤原 宣夫
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2001 年 29 巻 p. 85-90

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抄録

都市域にある湿地を生物の住み場所として保全、整備する際の知見を得るために、千葉県と茨城県にまたがる利根川沿いの地域を事例地として、湿地分布の経時変化と鳥類生息状況に関する調査を行った。湿地の経時変化については、旧版地図及び空中写真の判読から、明治期から現在までの4時期について河川、湖沼、ため池などの湿地の分布を図化し、面積、箇所数や水性植物帯の変化などを調べた。その結果、湿地の開放水面やヨシ原などの水生植物帯の面積は、明治期 (1880年) の状態から大幅に減少したことがわかった。抽水植物帯にっいては、面積が減少する一方で箇所数が増加しており、湿地植生帯の分断化が進行したことが伺われた。さらに、湿地の総面積と、そこで繁殖する湿地性鳥類の種数の間には、r=0.81 (r2=0.65) の相関があった。また、鳥類の種毎に必要とする湿地の面積の範囲が異なり、いくつかの種は大面積の湿地でのみ繁殖していた。湿地の細かい環境要素との相関を見たところ、湿地の総面積の他には湿地植生の多様性と湿地の形状が鳥類の種数に影響していた。これらの結果から、都市域に残存する大面積の湿地保全が、湿地性鳥類の保全にとって重要であることが示唆された。

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