抄録
近年、住民の環境や行政への関心が高まっており、施策の実施に際して、行政と住民との間の合意形成が求められている。特に下水道のように、施策実施に伴う費用負担が直接生じる場合の合意形成は重要な課題である。このような合意形成を円滑に進めていくためには、住民の施策評価の視点を明らかにし、意思決定プロセスを把握する必要がある。本研究では、水環境保全施策に関する情報提供を繰り返し実施することにより、住民の理解を深め合意形成を図る手法を提案し、琵琶湖流域において、同一者を対象に3回のアンケート調査とその間のニューズレター配布を行い、情報提供による住民の意識変化を評価することにより同手法の効果を検証した。その結果、市街地排水対策や下水処理の高度化に関しての住民の評価が高まった。また、水環境保全のための費用負担に対しても支払意志が向上するなど一定の理解が得られた。下水道の整備・管理を最終目標とした意思決定プロセスの方向を示すことができた。