2022 年 31 巻 p. 96-101
カンムリウミスズメは日本近海にのみ生息する海鳥で国の天然記念物で絶滅危惧II類に指定されている.神子元島は本種の貴重な繁殖地だが,この周辺海域では洋上風力発電の建設計画が発表されている.本研究では洋上風力発電の建設が本種の繁殖に与える影響を評価する目的で,5個体のカンムリウミスズメにGPSロガーを装着し,5個体から20-50時間の位置記録,うち4個体から41-107回の潜水記録を得た.ロガー装着個体は島の西側の水深20m以浅の海域を主に利用していた.利用海域のコアエリアの面積は3.2-77.5km2(平均35.93km2)だった.潜水は日中に行われ,平均潜水深度は3.0-4.0m,平均潜水時間は8.2-11.2秒だった.これまでの調査結果と合わせると,本種の利用海域は洋上風力発電建設予定地の南東部分と大きく重複しており,浅い水深に分布する餌生物を日中採餌している本種は,建設場所によっては大きな影響を受けると考えられた.