放射線防護分科会会誌
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新法令に対する放射線治療室の遮へい評価
亀島 英典小林 正尚都築 雄士鈴木 昇一藪谷 俊峰
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2002 年 14 巻 p. 30-31

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抄録

[目的]平成13年4月1日に放射線関連法令が改正された。そこで、新法令に対応する放射線治療室の遮へいについて実測と計算を行い、その問題点を検討した。[方法]1.実測は遮へい計算で線量が最も高い地点及び、治療室の周辺の5箇所を測定した。2.3月間の照射時間の分析を行い、実照射時間、方向利用率を求めた。3.実照射時間を用いて遮へい計算を行い、実測値と比較した。利用線錐を含む評価点はサーベイメータによる測定もおこなった。4.照射時間の分析結果を基に、新法令の計算を行い、現在の使用状態を維持する方法について検討した。[使用機器]測定にはTLDを98本、電子線量計(DOSE 3)を4個、ガラス線量計を30個使用した。線量率測定には電離箱式サーベイメータを使用した。[参考文献]遮へい計算式は安全技術センターの遮へい計算実務マニュアル2000を用いた。[結果]1.測定結果 3月間の累積の測定結果を表1に示した。測定器は図1に示した5箇所に取り付けた。A(治療室扉)、B(治療計画室)、C(治療室外壁)点には3種類、D(操作室ピット)、E(操作卓前壁)点には2種類の放射線測定器を取り付けた。C点のTLDの測定結果が他に比べて高くなっていた。これは、貼り付けの際の不具合で、壁に直接貼り付けたのが原因ではないかと考えた。これについて追加実験を行ったところ、壁の散乱を考慮して1cm程度離して測定した値より、1.7倍程度大きく、換算すると括弧内の値となった。この結果で、実測値は十分に法令1.3mSv/3月を担保していた。[table] 2.照射時間の分析 照射時間の分析を行い、使用時間、方向利用率を求めた。[figure] 3.実照射時間を用いた計算値と実測値の比較 照射時間の分析結果を基にした、方向利用率、照射時間を用いて遮へい計算を行った。サーベイメータを用いて計算と同条件で測定を行い3月に換算した結果、計算値とほぼ近くなった。トレーサビリティのとれているガラス線量計の値と計算値を比較すると、実照射時間を用いた計算でも、外壁の実測値は計算値の3分の1以下となった。このことより、実照射時間を用いた計算値では法令を担保しており、計算値と同条件での測定値は計算値に近くなる。4.利用線錐を含む評価点の計算値の比較 利用線錐を含む評価点の計画室、外壁の遮へい計算値は使用時間を変えて行い、表2a、2bに示した。表中の値は4MVと10MVの計算値の合計を示した。表2aは従来の届出時間、4MV、10MVともに125時間で計算を行った。表2bは実照射時間を用いて計算を行った。使用時間を比較すると、4MVが従来の25%、10MVが従来の6%であった。このことより、従来の届出時間では法令を担保できない。[table][table] 5.現状を維持する方法 使用時間のみを変化させる場合、特に問題であった4MVで法令を担保できる限界の使用時間を届出時間とするのは妥当であるかについて検討した。1.3月間の照射時間の分析によると、1月間の最大使用時間は13時間程度で、3月に換算しても40時間程度であった。2.全身照射が行われても、1月に2人程度ならば法的数値は保たれた。このような使用時間の調整が適当でない場合、実測による線量管理は不可欠である。[まとめ](1)治療室周辺の漏洩線量を測定することで、法令は十分に担保していることが確認できる。(2)照射時間の分析結果を基に届出時間を決める。以上の方法で放射線治療室の測定及び、計算を行えば遮へい構造の強化の必要性がないことを証明でき、現状は保たれる。(3)遮へい計算は実際の使用状況に対しては過剰評価となるため、実測による線量管理には意味があると考えられた。

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© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
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