放射線防護分科会会誌
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個人線量計(OSL)による術者被ばくの測定 : 新法令施行による評価値変化(第1報)
熊谷 道朝新谷 光夫倉西 誠
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2002 年 14 巻 p. 32-

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抄録

【目的】今回の法令改正に伴い,不均等被ばくにおけるバッジ装着部位の荷重係数が変更された。改正前は,防護衣外側のバッジ測定値の荷重係数が0.35であり、過大評価と指摘されていた。今回,荷重係数が0.11に変更され,評価値がどのように変化するかを知るため,IVRに携わる術者の被ばく線量を実効線量当量および実効線量で算出し評価した。また,水晶体,皮膚の被ばく線量も測定し,改正法令施行による影響も検討した。【方法】1)1ヶ月単位で心臓カテーテル検査(PTCA3名、アプレーション3名)・血管造影(脳血管内手術1名)に携わる医師にOSL個人線量計およびリングバッジ(TLD:LiF素子1本)を用いて術者被ばく線量を測定する。2)装着部位は、甲状腺プロテクター外側の左右の2箇所、体幹部プロテクター内側左胸部、左子指の4箇所とした。3)不均等被ばく算出式は、改正前:実効線量当量(H_E)=0.35H1(a)+0.65H1(b)、改正後:実効線量(E)=0.11H1(a)+0.89H1(b)、H1(a):頭部または頸部に装着したバッジから得た1cm線量当量、H1(b):胸部または腹部に装着したバッジから得た1cm線量当量ただし,算出に使用した1cm線量当量はすべて法令改正後の1cm線量当量値を使用した。【結果及び考察】図1.は、術者別の6ヶ月間の「実効線量当量」及び「実効線量」の合計である。左頚部と左胸部測定値から算出した「実効線量当量」は,「実効線量当量限度50mSv/y」、同様に左頚部と左胸部測定値から算出した「実効線量」は,「実効線量限度20mSv/y:5年ブロック」を超えないと推定できる。また、装着部位による算出値は、「実効線量当量」及び「実効線量」いづれの場合も「右頚部÷左頚部」≒0.8である。図2.は、術者別の6ヶ月間の水晶体の等価線量及び皮膚の等価線量の合計である。水晶体等価線量は、測定部位がいずれの場合においても,150mSv/yを超えないと推定できる。皮膚の等価線量も500mSv/yを超えないと推定できる。【まとめ】当施設では,改正法令施行により実効線量は実効線量当量のほぼ50%前後の値となると推定できる。また,ブロック5年の実効線量限度(20mSv/y)を超えることはないと推定できる。しかし,「管理のための線量値(現行:0.4mSv/m)」を超えることがある。当施設での「管理のための線量値」は,1.0〜1.5mSv/mが適切と考えられる。非常に高い数値の「管理のための線量値」と思われるが,20mSv/y)を超えることはないと推定できる。また,妊娠可能な女子についての「管理のための線量値」は今後検討したい。[figure][figure]

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© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
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