平和研究
Online ISSN : 2436-1054
投稿論文(自由論題)
3 国際刑事裁判所をめぐるアフリカ連合の対外政策の変容—アフリカの一体性と司法化の進捗からの考察
藤井 広重
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2021 年 57 巻 p. 137-165

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抄録

本稿は、アフリカ連合(AU)における意思決定に関する現況を、対国際刑事裁判所(ICC)政策に関する議論とアプローチから整理し、その変容過程を検証することで、アフリカ域内からアフリカ域外へと影響力を拡大、行使しようするアフリカ諸国による試みの実態解明に貢献することを目的としている。考察の枠組みとして、まず司法化に関する先行研究を整理し、次いでアフリカの一体性を形成するAUの意思決定プロセスとその機能を確認した。最後にAUにおけるICCに対する司法化の具体的な展開について検証し、AUによる国連総会での国際司法裁判所(ICJ)への勧告的意見要請の背景と、この動向がICCに与えうる影響について、AU側の視点から指摘した。

本稿はAUが対ICC政策において、司法化を進捗させアフリカの一体性を維持し「ひとつの声」として法的権利を主張しながら、ICC司法介入をめぐる交渉に臨んできたことを明らかにした。AUは当初、ローマ規程の枠組みから加盟国の権利を主張してきたが、これに失敗すると次いでAU総会にて決定を行うことで自ら法的権利を作り出した。そして、この法的権利の論拠が揺れ始めると、今度は国際慣習法を根拠にICJへの委任を目指した。AUは総会での議論と決定を巧みに利用することで対外政策を変容させ、アフリカの一体性のもとでアフリカの外部と交渉しようとしている。本稿の考察は、今後のアフリカとアフリカ域外との関係性を捉えるための新しい視点を提示した。

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