抄録
1986年に誕生した原子間力顕微鏡(AFM)は、様々な環境下にある試料表面の高解像イメージングや力学特性計測、或いは、ナノファブリケーションのためのツールとして広く利用されている。しかし、走査速度が遅く効率が悪いだけでなく、試料の動的な現象を追跡できないという限界を抱えていた。従って、例えばバイオ応用では、水中環境下にある生物試料の動的なプロセスを観察できない。この限界を克服する研究が20年近くに亘り行われてきたが、ようやく実際の応用に資する高速AFMが実現された。この高速化を可能にした諸技術、現在の性能、応用成果を示すとともに、今後展開すべき発展の方向を議論する。