抄録
本稿は、特にフッサールが展開した(1)静態的・(2)発生的・(3)世代的現象学の観点から、国際法規範の志向性を分析するための方法を提示することを目的とする。特に慣習国際法の同定という文脈に焦点を当て、自己決定権の慣習法性を同定した国際司法裁判所のチャゴス諸島分離事件勧告的意見を素材しながら考察を進める。国際法の主流である法実証主義は、(1)客観主義のもとで規範を物的に捉え、(2)時間や(3)空間も固定して想定する。これに対して、本稿の現象学的国際法学は、国際法があくまでも国際法律家の(1)主観的かつ相対的な意識作用と、それ以前から働いている(2)過去把持-原印象-未来予持の同時性や(3)故郷/異郷世界の共-構成といった働きから構成されていることを明らかにした。このような現象学の知見により、人間的生と分かち難く結びついている「事象そのものへ」と立ち返り、本来の精神に溢れた「真なる実証主義」が国際法理論にもたらされる。