抄録
肩関節周囲炎を呈する患者において結帯動作にて痛みを生じるケースは比較的多く,ADL上問題になることが多い。結帯動作における主要問題点としては肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節が挙げられ,どちらに介入するかによってその後の治療展開が異なる。今回は,本田らが述べている結帯動作において母指先端が尾骨から第7胸椎に到達するまでに6.6°しか内旋せず,下垂位から母指先端が尾骨に到達するまでにほぼ最大に近い内旋を行っているという過去の知見を用いて評価を行い,問題点を肩甲胸郭関節に絞り,体幹機能との関連からアプローチした結果,良好な結果が得られた症例について報告する。結帯動作の評価を行う際には,肩甲上腕関節内旋・肩甲胸郭関節のどちらに問題が強いかを鑑別した後,他部位との相互関係を多角的に評価し,的確なアプローチに繋げていくことが重要である。