抄録
踵骨骨折は頻度が高い骨折である。距踵関節面に骨折面が達している場合はプレート固定を用いて関節面を正確に整復することが多くなった。しかしながら荷重時痛を訴え理学療法を施行する上で難渋することが多い。本症例は糖尿病のためギプス固定期間が長期になりROM訓練が遅れたため内がえしが制限され,後足部外反アライメントの状態になり,荷重時痛を呈していた。荷重時痛の原因として後足部外反アライメントが距骨下関節にストレスを与えたことと,手術による腓骨筋腱の侵襲が足関節の筋安定化機構を弱化させ正常アライメントで支持できなくなったことであると考えた。治療の結果これらが改善したことで荷重時痛が減少した。踵骨骨折後の理学療法では関節可動域の改善だけではなく,後足部のアライメント,荷重時の足関節筋群の筋安定化機構に注目したアプローチが必要と示された。