抄録
完全対麻痺者にとってpush upは,日常生活活動(ADL)の自立度を高める重要な動作である。今回,長坐位push upは足部下の摩擦力に大きく影響を受けていると考え,上肢機能に問題のない完全対麻痺者5名に対し,足部下をA)靴下のみ,B)靴下+スライディングシート,C)裸足+滑り止めマット,という環境でpush upを行った。この時の殿部最大挙上の保持時間,殿部最大挙上距離,殿部最大挙上時の身体各部位の屈曲角度を求め,Aを基準としB・Cと比較した。その結果,Bでは,push up時に足部の引き込みが可能であり体幹・股関節を屈曲させ身体を前方に回転する動作パターン,Cでは体幹・股関節屈曲角は減少し,肩甲骨下制により殿部挙上させる動作パターンが生じた。したがって,足部下の環境はpush upの動作パターンを変化させる要因となるため,十分に配慮する必要があると考える。