抄録
【目的】三次元動作解析は様々な剛体リンクモデルを用いて分析が行われているが,用いるモデルによる関節中心位置や運動学的な推定値に与える影響は十分に明らかになっていない。本研究ではDavisの股関節の関節中心(以下,HC)推定値と臨床的に用いられるDIFFモデルのHC推定値を比較するとともに,起立動作時の関節角度における影響を検討した。【方法】被験者に静止立位および40 cm台からの起立動作を行わせ,DavisとDIFFの2種類の方法によりHC推定し,関節角度を算出した。【結果】DIFFの推定値はDavisの推定値と比較して,3軸の各方向に20 mm以上異なる部位に位置していた。股関節角度は離殿時に最大となり,10.7±1.9°の差がみられた。【考察】用いるモデルにより算出されるHCや角度は有意に異なり,実験の対象とする動作を考慮してモデルを選択する必要があることが示唆された。