抄録
【はじめに】手指屈曲時において浅指・深指屈筋腱の逆転現象を呈した弾発指症例を経験した。本症例に対し運動療法を実施し,弾発現象の改善を得た。弾発現象の発生機序と治療方法についてその要点を運動学的視点から検討する。【方法】弾発現象の改善を目的として浅指屈筋腱の滑走性改善を主体とした運動療法を実施した。PIP関節の他動運動により浅指屈筋腱の滑走に必要な関節可動域を獲得し,DIP関節伸展位でのPIP関節自動屈曲運動である指腹つまみを反復することで浅指屈筋腱の滑走を促した。【結果】理学療法開始後1年の時点で屈筋腱の逆転は観察されなくなり,弾発現象と手指関節可動域も改善した。【考察】屈筋腱の逆転による弾発現象は運動療法により改善可能な病態であると考える。浅指屈筋腱の滑走性改善が必要であり,DIP関節伸展位でのPIP関節自動屈曲運動である指腹つまみが屈筋腱逆転を防止する重要な手指屈曲様式になると考える。